tue, sep 8, 2015

カズオは同僚とふたり、真夜中過ぎの東通りを歩いていた。
クレーム対応の残業で夕食もとれず、終電に駆け込んだときは、ぼろ雑巾だった。
座席に倒れ込んだ同僚が、餃子ぎょうざ、と呻きはじめたのにカズオもつられ、天津飯を喰おうと決めた。
深夜営業の王将を検索して、東通りにみつけたのだった。

新御堂をわたったところで、若い男が近づいてきた。
長身でハンサム。爽やかな笑顔。おおかた飲み屋の呼び込みだろうとカズオはおもった。
ゆっくり丁寧にお辞儀をしたあと、男が言った。
「こんばんは、おつかかれさまです。お客様、おっぱいは必要ではないですか?」
聞きながら軽く手を上げてやりすごした直後、カズオが一瞬こわばったのを、男に気づかれたかもしれない。
でもいまは餃子と天津飯なのだ。同僚の歩調も緩まらなかった。