sun, sep 20, 2015

ヤスシの事務所にはインターンやアルバイトの学生が数人、出入りしている。

新人の学生がはじめて事務所にやってくる日、ヤスシは彼ら彼女らにあることを仕掛ける。便所にある便器のリモコンの電池を抜いておくのだ。リモコンが利かないとシャワーもでないし、温風もでない。そこまではいいとして、問題は、流れない。このちょっとだけ厄介な状況を切り抜けられるかどうか。

流すボタンは便器本体にもついている。このことを知っている、または推測できた新人は軽くパスできる。ただこのボタンはみつけにくい。かたちもわかりにくい。レバーではなくボタンだから。存在を知らない者が偶然みつけることは少ない。さらに便器の電源プラグも抜かれている。便器にコンセントが必要なことを知らなければ、ここでパスすることはできない。

壁についているリモコンの電源が電池かもしれないと気づけば、電池切れを疑える。では電池はどこに入っているのか。側面に見あたらないとき、リモコン本体が壁にひっかけてあるだけと発見できればかなりの前進だ。

リモコンを壁からとりはずせば、背面に電池収納部がみつかる。そしてその蓋を開けて、中に電池が入っていないのを見たときには、すこしばかり狼狽するかもしれないが、スペアの電池を物入れの中にみつけるのはすぐのことだ。だが、この新しいはずの電気が空だとわかるのもまたすぐのことなのだ。

ヤスシは黙って、水流の音とともに新人が生還するのを待っている。